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Restaurants
- ミトミ えもん added a new meal Dinner at ラトリエプリュ at L’Atelier
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【ラトリエプリュ】
自由が丘の街に自然と溶け込む一軒、『ラトリエ プリュ』。駅からも程よい距離に構えながら、その実力は食通たちが認める本格派だ。2018年、かつて自由が丘駅近くで行列を生んだ「キッチン プラス」のシェフが立ち上げた店。アトリエ=工房。“+”には、積み上げた洋食をさらに高めるという意思が込められている。フレンチ出身ゆえ、ソースの引き方、火入れの温度、野菜の甘みの引き出し方まで精度が高い。フランス料理の技術を土台に据えた、一段上の洋食だ。
さっそく料理をご紹介してまいりましょう。
「ニース風サラダ」。彩りの立体感にまず目を奪われる。艶やかなトマト、スライスされたゆで卵、そしてアンチョビとツナがしっかりと存在感を示す構成。シャキシャキの葉物に、アンチョビの塩気とツナの旨味が重なり、味わいに厚みを生む。酸味は穏やかで、ドレッシングは素材の輪郭を崩さない設計。前菜の段階で店のポテンシャルの高さを確信する。
「ミネストローネ」は、赤く澄んだスープの中に野菜の旨味が幾重にも重なる。トマトの酸は角が取れ、ブイヨンの厚みが下支えする。具材は煮崩れず、それでいて柔らかい。火入れの精度がそのまま味の透明感に直結している。スープでここまで魅せられると、この店の実力は疑いようがない。
「ハンバーグ(和風テリキおろし)」。この店を語る上で外せない一皿。ナイフを入れた瞬間に伝わる確かな弾力、じわりと溢れる肉汁。表面の香ばしい焼き目と、中心のふっくらとした質感のコントラストが実に鮮やかだ。甘辛いテリヤキの照りとコクが肉の旨味を増幅させ、そこへたっぷりの大根おろしが重なって一気に後味を引き締める。重厚なのに軽やか。
「醤油風味のオムライス(デミグラスソース)」は、ふわりと巻かれた卵の質感、内側のライスに忍ばせた醤油の香ばしさ。そこへ漆黒のデミグラスが重なる瞬間、甘味・塩味・苦味が一つの線になる。濃厚なのに重たくない。計算されたバランスがあるからこそ、最後まで美味しく食べ切れる。
サラダとスープの段階で確信し、ハンバーグで心を掴まれ、オムライスでとどめを刺される。シェフが長年積み上げてきた技術と哲学は、一皿一皿の精度の高さとしてはっきり伝わってくる。他のメニューも試さずにはいられない、そんな余韻を残してくれる一軒だ。ご馳走様。
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【ラトリエプリュ】
自由が丘の街に自然と溶け込む一軒、『ラトリエ プリュ』。駅からも程よい距離に構えながら、その実力は食通たちが認める本格派だ。2018年、かつて自由が丘駅近くで行列を生んだ「キッチン プラス」のシェフが立ち上げた店。アトリエ=工房。“+”には、積み上げた洋食をさらに高めるという意思が込められている。フレンチ出身ゆえ、ソースの引き方、火入れの温度、野菜の甘みの引き出し方まで精度が高い。フランス料理の技術を土台に据えた、一段上の洋食だ。
さっそく料理をご紹介してまいりましょう。
「ニース風サラダ」。彩りの立体感にまず目を奪われる。艶やかなトマト、スライスされたゆで卵、そしてアンチョビとツナがしっかりと存在感を示す構成。シャキシャキの葉物に、アンチョビの塩気とツナの旨味が重なり、味わいに厚みを生む。酸味は穏やかで、ドレッシングは素材の輪郭を崩さない設計。前菜の段階で店のポテンシャルの高さを確信する。
「ミネストローネ」は、赤く澄んだスープの中に野菜の旨味が幾重にも重なる。トマトの酸は角が取れ、ブイヨンの厚みが下支えする。具材は煮崩れず、それでいて柔らかい。火入れの精度がそのまま味の透明感に直結している。スープでここまで魅せられると、この店の実力は疑いようがない。
「ハンバーグ(和風テリキおろし)」。この店を語る上で外せない一皿。ナイフを入れた瞬間に伝わる確かな弾力、じわりと溢れる肉汁。表面の香ばしい焼き目と、中心のふっくらとした質感のコントラストが実に鮮やかだ。甘辛いテリヤキの照りとコクが肉の旨味を増幅させ、そこへたっぷりの大根おろしが重なって一気に後味を引き締める。重厚なのに軽やか。
「醤油風味のオムライス(デミグラスソース)」は、ふわりと巻かれた卵の質感、内側のライスに忍ばせた醤油の香ばしさ。そこへ漆黒のデミグラスが重なる瞬間、甘味・塩味・苦味が一つの線になる。濃厚なのに重たくない。計算されたバランスがあるからこそ、最後まで美味しく食べ切れる。
サラダとスープの段階で確信し、ハンバーグで心を掴まれ、オムライスでとどめを刺される。シェフが長年積み上げてきた技術と哲学は、一皿一皿の精度の高さとしてはっきり伝わってくる。他のメニューも試さずにはいられない、そんな余韻を残してくれる一軒だ。ご馳走様。
#ラトリエプリュ #自由ヶ丘 Less
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- ミトミ えもん added a new meal Dinner at うずとかみなり at Uzu to Kaminari (うずとかみなり)
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【うずとかみなり】
藤沢の街並みに映えるブルーの外観。その清涼感の奥に確かな熱量を潜ませる『うずとかみなり』。2022年3月創業。屋号に掲げるのは、一杯の中に渦巻く情熱と雷鳴のような衝撃を。そのレベルを目指したラーメンを出し続け、結果として藤沢で確固たる人気を築いている一軒だ。
月曜は限定のみ。王道狙いだったので残念ではあったが、気を取り直して「お出汁中華そば」。結果的に、この一杯でも十分に店の実力は伝わってきた。丼顔は実に端正。澄み切った琥珀色のスープ、整然と並ぶ九条葱、艶やかな味玉、凛と立つ海苔。視覚の段階で完成度が伝わる。
スープを啜る。豚や煮干し、鰹節などを重ねた出汁が幾重にも広がる。旨味は厚いが濁らない。無化調らしい透明感を保ちながら、味の密度は十分だ。後半に生姜が立ち上がり、全体を引き締める。その入り方が実に巧みで、出汁の余韻を壊さず、輪郭だけを整えていく。油の量も計算され、軽やかさとコクが均衡する。気づけばスープを飲み干している。
麺もうまい。多加水の手揉み麺は、もちりとした弾力と滑らかな啜り心地を両立。小麦の甘みを感じさせながら、スープを的確に抱え込む。持ち上げは強すぎず弱すぎず、出汁と拮抗する関係を築く。どちらかが主役に寄り切らない。この均衡こそが、この一杯の完成度を支えている。
そこに合わせた「胡椒めし」がまた憎い。炊き立ての米に黒胡椒を効かせただけの潔い構成だが、これがスープと抜群に合う。まずはそのまま、米の甘みと胡椒のキレを楽しむ。そして終盤、残した出汁をひと匙落とす。米がスープを吸い込み、出汁の旨味が輪郭を持って立ち上がる。
サイドメニューも抜かりない。チャーシューの延長線上にある「四万十ポークの肉汁焼売」は、その肉質の良さを別角度から提示する一皿だ。ふわりと蒸し上げられた薄皮の中に、四万十ポーク特有の甘い脂と密度のある赤身の旨味を閉じ込める。箸で持ち上げた瞬間から柔らかく、噛めばじゅわりと肉汁が広がる。
そして最後に触れておきたいのが店主の存在だ。イケメンである。だが印象に残るのは顔立ちだけではない。鍋前に立つ姿勢、麺上げの高さ、丼を差し出す角度。動きに無駄がなく、整っている。接客もいい。声のトーンは柔らかく、距離感は自然体。その丁寧さが店全体の空気を作っている。所作が整い、味が整い、空間が整う。だから丼も整う。ラーメンも人もイケメン。見た目の話ではなく、芯が通っているという意味でのイケメンだ。藤沢で支持を集める理由は、その総合力にある。ご馳走様でした。
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【うずとかみなり】
藤沢の街並みに映えるブルーの外観。その清涼感の奥に確かな熱量を潜ませる『うずとかみなり』。2022年3月創業。屋号に掲げるのは、一杯の中に渦巻く情熱と雷鳴のような衝撃を。そのレベルを目指したラーメンを出し続け、結果として藤沢で確固たる人気を築いている一軒だ。
月曜は限定のみ。王道狙いだったので残念ではあったが、気を取り直して「お出汁中華そば」。結果的に、この一杯でも十分に店の実力は伝わってきた。丼顔は実に端正。澄み切った琥珀色のスープ、整然と並ぶ九条葱、艶やかな味玉、凛と立つ海苔。視覚の段階で完成度が伝わる。
スープを啜る。豚や煮干し、鰹節などを重ねた出汁が幾重にも広がる。旨味は厚いが濁らない。無化調らしい透明感を保ちながら、味の密度は十分だ。後半に生姜が立ち上がり、全体を引き締める。その入り方が実に巧みで、出汁の余韻を壊さず、輪郭だけを整えていく。油の量も計算され、軽やかさとコクが均衡する。気づけばスープを飲み干している。
麺もうまい。多加水の手揉み麺は、もちりとした弾力と滑らかな啜り心地を両立。小麦の甘みを感じさせながら、スープを的確に抱え込む。持ち上げは強すぎず弱すぎず、出汁と拮抗する関係を築く。どちらかが主役に寄り切らない。この均衡こそが、この一杯の完成度を支えている。
そこに合わせた「胡椒めし」がまた憎い。炊き立ての米に黒胡椒を効かせただけの潔い構成だが、これがスープと抜群に合う。まずはそのまま、米の甘みと胡椒のキレを楽しむ。そして終盤、残した出汁をひと匙落とす。米がスープを吸い込み、出汁の旨味が輪郭を持って立ち上がる。
サイドメニューも抜かりない。チャーシューの延長線上にある「四万十ポークの肉汁焼売」は、その肉質の良さを別角度から提示する一皿だ。ふわりと蒸し上げられた薄皮の中に、四万十ポーク特有の甘い脂と密度のある赤身の旨味を閉じ込める。箸で持ち上げた瞬間から柔らかく、噛めばじゅわりと肉汁が広がる。
そして最後に触れておきたいのが店主の存在だ。イケメンである。だが印象に残るのは顔立ちだけではない。鍋前に立つ姿勢、麺上げの高さ、丼を差し出す角度。動きに無駄がなく、整っている。接客もいい。声のトーンは柔らかく、距離感は自然体。その丁寧さが店全体の空気を作っている。所作が整い、味が整い、空間が整う。だから丼も整う。ラーメンも人もイケメン。見た目の話ではなく、芯が通っているという意味でのイケメンだ。藤沢で支持を集める理由は、その総合力にある。ご馳走様でした。
#うずとかみなり #ラーメン Less
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- ミトミ えもん added a new meal Dinner at 味芳斎 支店 at Mihousai
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【味芳斎 支店】
浜松町の地下に広がる大箱中華『味芳斎 支店』。1958年創業の老舗「味芳斎」は現在本店が休業中。その味をいま担っているのがこちらの支店だ。階段を降りれば、ずらりと並ぶテーブル席。装飾性よりも実用性。昼どきには一気に席が埋まり、レンゲの音が絶え間なく響く。働く街に合わせた、中華食堂の立ち位置だ。
本店では丼で味わったが、今回は定食で「麻婆豆腐」に向き合う。皿いっぱいに広がる赤い餡。表面を覆う辣油が艶を放ち、辛さの強さを視覚から伝えてくる。豆腐はかなり細かく刻まれ、原形はほぼ残らない。この粒度の細かさが舌触りを滑らかにし、結果として飲み物のように流れ込む食感を生む。
味の軸は明快だ。まず来るのは唐辛子のストレートな辛さ。舌に直接当たる熱が前面に立つ。挽肉の旨味が土台を作り、豆板醤の塩味とコクが全体を支える。複雑さを積み上げるというより、辛味を中心に押し切る構成。油の量も十分で、熱が持続する。気づけば汗が滲み、レンゲが止まらない。
そして白米も止まらない。辛味からの逃げ道として自然と箸が伸び、気づけば一杯では足りず、ついおかわり。刺激を受け止める役割でありながら、結果的に食欲を加速させる装置になっている。
本店が休業中のいま、その味を安定して出し続けている存在。しっかり辛く、しっかり汗をかき、しっかり白米を消費させる力がある。飲み物のように流れ込む麻婆豆腐と、それを受け止める白米。この往復だけで十分成立している。浜松町で刺激を求めるなら、このビルの地下へ降りていこう。ご馳走様でした。... More
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【味芳斎 支店】
浜松町の地下に広がる大箱中華『味芳斎 支店』。1958年創業の老舗「味芳斎」は現在本店が休業中。その味をいま担っているのがこちらの支店だ。階段を降りれば、ずらりと並ぶテーブル席。装飾性よりも実用性。昼どきには一気に席が埋まり、レンゲの音が絶え間なく響く。働く街に合わせた、中華食堂の立ち位置だ。
本店では丼で味わったが、今回は定食で「麻婆豆腐」に向き合う。皿いっぱいに広がる赤い餡。表面を覆う辣油が艶を放ち、辛さの強さを視覚から伝えてくる。豆腐はかなり細かく刻まれ、原形はほぼ残らない。この粒度の細かさが舌触りを滑らかにし、結果として飲み物のように流れ込む食感を生む。
味の軸は明快だ。まず来るのは唐辛子のストレートな辛さ。舌に直接当たる熱が前面に立つ。挽肉の旨味が土台を作り、豆板醤の塩味とコクが全体を支える。複雑さを積み上げるというより、辛味を中心に押し切る構成。油の量も十分で、熱が持続する。気づけば汗が滲み、レンゲが止まらない。
そして白米も止まらない。辛味からの逃げ道として自然と箸が伸び、気づけば一杯では足りず、ついおかわり。刺激を受け止める役割でありながら、結果的に食欲を加速させる装置になっている。
本店が休業中のいま、その味を安定して出し続けている存在。しっかり辛く、しっかり汗をかき、しっかり白米を消費させる力がある。飲み物のように流れ込む麻婆豆腐と、それを受け止める白米。この往復だけで十分成立している。浜松町で刺激を求めるなら、このビルの地下へ降りていこう。ご馳走様でした。 Less
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- ミトミ えもん added a new meal Dinner at 尾山台 山田 at Oyamadai Yamada (尾山台 山田)
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【尾山台 山田】
尾山台の住宅街、その静けさの奥に据えられた『尾山台 山田』。この店の空間を支配しているのは、設えや演出ではなく、薪窯の存在そのものだ。窯を中心に据え、L字に組まれたカウンターは、客を自然と火の正面に導く。生地が伸ばされ、火が入り、皿が立ち上がるまでの工程がすべて視界に入り、料理と空間が分断されない。どこか根源的で、余計な情報が削ぎ落とされた感覚がある。ちなみに、暖房は置かれていないが、火の熱が空間に行き渡っているのもその感覚を強めている。
この空間で展開されるのが、ピッツァを軸に据えたコース仕立ての構成。日本ではまだ多くなく、それ自体が明確な個性になっている。特徴的なのは、ピッツァと料理が交互に組み込まれている点だ。ピッツァで軸を示し、料理で広げ、またピッツァに戻る。その往復が自然に設計されている。そして素材へのこだわりも明快だ。サスエ前田魚店の魚やサカエヤの肉といった輪郭のはっきりした食材を用い、ピッツァだけでなく料理単体でもきちんと成立させる。構成と素材、その両方で個性をつくっている。
コースはマルゲリータから始まる。最初の一枚で、この店がどんな方向を向いているのかがはっきりと示される。トマトは量を使い、生地の穀物感と正面から向き合う構成。モッツァレラは過不足なく、バジルは香りの輪郭を定める役割に徹する。噛んだ瞬間に小麦、続いてトマトの酸、最後に薪の香りが残る。この流れが、そのまま以降の料理の基準になる。
続くのは、イワシのマリネとタスマニアサーモンを一体として組み立てた前菜。脂の異なる二種の魚を重ね、ディルやマイクロ野菜、ハーブで青みを添える。下にはクスクスとカポナータ、ピキージョのソース。唐辛子とバルサミコ酢が全体を引き締める。
ここで二枚目のピッツァ、ビスマルク。一般的なビスマルクがハムやベーコンでまとめるのに対し、ここでは近江牛のボロネーゼと内腿肉を重ね、さらにポルチーニの香りを加える。肉の旨味と脂の厚みが一段深く、構成は明らかにリッチだ。マルゲリータで示した基準を、肉で拡張する展開になっている。
ここで挟まれるのが、鰆と無農薬米を使ったリゾット。サスエ前田魚店の鰆は火を入れすぎず、米の甘みと野菜のブロードが全体を支える。ホワイトアスパラガスとブラウンマッシュルームのソースが加わり、ピッツァが続いた口を一度フラットに戻す。
続いて登場するのが、真鱈の白子のピッツァ。ピッツァに旬を組み込めるのは、コースで構成しているからこそだと素直に思う。白子のとろみを、生地と薪の熱が受け止め、下仁田葱の甘みが全体をつなぐ。季節の食材をどう料理に落とし込むか、その選択肢の中にピッツァが自然に含まれている。
肉料理は北海道産の熟成サーロイン。サカエヤらしい熟成で、赤身の旨味が前に出る。余計な装飾を排し、火入れの正確さで勝負する一皿。コース終盤に向けて、味の軸を一本に戻す存在だ。
締めはマリナーラ。トマトと生地、火の関係をもう一度シンプルに提示する一枚だ。そこにしっかりと主張するニンニクの存在感。甘みの奥に鋭さが走り、最後に薪の香りと重なる。最初のマルゲリータと自然に呼応しながら、より輪郭をはっきりさせて終わらせる。
デザートは紅はるかと放牧牛乳のジェラート。甘さは穏やかで、芋の輪郭が明確。
ピッツァはここでは料理の一部ではない。コースそのものだ。最初に提示し、途中で揺らし、最後に戻す。その往復を体験することに、この店の価値がある。単品では見えない流れがあり、その流れの中でこそピッツァが立ち上がる。構成そのものを味わう店だ。ご馳走様でした。
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【尾山台 山田】
尾山台の住宅街、その静けさの奥に据えられた『尾山台 山田』。この店の空間を支配しているのは、設えや演出ではなく、薪窯の存在そのものだ。窯を中心に据え、L字に組まれたカウンターは、客を自然と火の正面に導く。生地が伸ばされ、火が入り、皿が立ち上がるまでの工程がすべて視界に入り、料理と空間が分断されない。どこか根源的で、余計な情報が削ぎ落とされた感覚がある。ちなみに、暖房は置かれていないが、火の熱が空間に行き渡っているのもその感覚を強めている。
この空間で展開されるのが、ピッツァを軸に据えたコース仕立ての構成。日本ではまだ多くなく、それ自体が明確な個性になっている。特徴的なのは、ピッツァと料理が交互に組み込まれている点だ。ピッツァで軸を示し、料理で広げ、またピッツァに戻る。その往復が自然に設計されている。そして素材へのこだわりも明快だ。サスエ前田魚店の魚やサカエヤの肉といった輪郭のはっきりした食材を用い、ピッツァだけでなく料理単体でもきちんと成立させる。構成と素材、その両方で個性をつくっている。
コースはマルゲリータから始まる。最初の一枚で、この店がどんな方向を向いているのかがはっきりと示される。トマトは量を使い、生地の穀物感と正面から向き合う構成。モッツァレラは過不足なく、バジルは香りの輪郭を定める役割に徹する。噛んだ瞬間に小麦、続いてトマトの酸、最後に薪の香りが残る。この流れが、そのまま以降の料理の基準になる。
続くのは、イワシのマリネとタスマニアサーモンを一体として組み立てた前菜。脂の異なる二種の魚を重ね、ディルやマイクロ野菜、ハーブで青みを添える。下にはクスクスとカポナータ、ピキージョのソース。唐辛子とバルサミコ酢が全体を引き締める。
ここで二枚目のピッツァ、ビスマルク。一般的なビスマルクがハムやベーコンでまとめるのに対し、ここでは近江牛のボロネーゼと内腿肉を重ね、さらにポルチーニの香りを加える。肉の旨味と脂の厚みが一段深く、構成は明らかにリッチだ。マルゲリータで示した基準を、肉で拡張する展開になっている。
ここで挟まれるのが、鰆と無農薬米を使ったリゾット。サスエ前田魚店の鰆は火を入れすぎず、米の甘みと野菜のブロードが全体を支える。ホワイトアスパラガスとブラウンマッシュルームのソースが加わり、ピッツァが続いた口を一度フラットに戻す。
続いて登場するのが、真鱈の白子のピッツァ。ピッツァに旬を組み込めるのは、コースで構成しているからこそだと素直に思う。白子のとろみを、生地と薪の熱が受け止め、下仁田葱の甘みが全体をつなぐ。季節の食材をどう料理に落とし込むか、その選択肢の中にピッツァが自然に含まれている。
肉料理は北海道産の熟成サーロイン。サカエヤらしい熟成で、赤身の旨味が前に出る。余計な装飾を排し、火入れの正確さで勝負する一皿。コース終盤に向けて、味の軸を一本に戻す存在だ。
締めはマリナーラ。トマトと生地、火の関係をもう一度シンプルに提示する一枚だ。そこにしっかりと主張するニンニクの存在感。甘みの奥に鋭さが走り、最後に薪の香りと重なる。最初のマルゲリータと自然に呼応しながら、より輪郭をはっきりさせて終わらせる。
デザートは紅はるかと放牧牛乳のジェラート。甘さは穏やかで、芋の輪郭が明確。
ピッツァはここでは料理の一部ではない。コースそのものだ。最初に提示し、途中で揺らし、最後に戻す。その往復を体験することに、この店の価値がある。単品では見えない流れがあり、その流れの中でこそピッツァが立ち上がる。構成そのものを味わう店だ。ご馳走様でした。
#尾山台 Less
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【モーゼ】
東中野でパスタを語るなら、まず触れておくべき存在がある。駅前で長年営業を続ける『モーゼ(MOSES)』。1973年に赤坂で創業し、1977年から東中野に根を張ってきた老舗で、明太子や納豆、紫蘇、出汁といった和の要素をスパゲッティに落とし込み、この街の日常に定着させてきた一軒だ。
そのモーゼとは別の場所に構えられているのが『Spaghetti... More
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【モーゼ】
東中野でパスタを語るなら、まず触れておくべき存在がある。駅前で長年営業を続ける『モーゼ(MOSES)』。1973年に赤坂で創業し、1977年から東中野に根を張ってきた老舗で、明太子や納豆、紫蘇、出汁といった和の要素をスパゲッティに落とし込み、この街の日常に定着させてきた一軒だ。
そのモーゼとは別の場所に構えられているのが『Spaghetti House MOSES』。位置づけとしては2号店にあたる存在で、メニュー構成も味の方向性も共通している。やっていることはシンプルで、同じスパゲッティを、同じように出している。
注文は、人気ナンバーワンの「明太子としめじと納豆しそ入り」。太めでもっちりとしたスパゲッティに、出汁を含んだとろみのあるスープ。明太子の塩味と旨味が前に出て、しめじが香りを支え、納豆の発酵由来のコクが重なっていく。咀嚼のたびに和のエッセンスが口の中に広がり、紫蘇が加わることで、最後だけがすっと切れる。
長い年月をかけて積み重ねられてきた時間と、二つの店舗という存在。その反復の中で、和風スパゲティはこの街の中で当たり前になっていったのだろう。東中野でパスタを語るなら、「MOSES」の存在は無視することはできない。ご馳走様でした。
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- ミトミ えもん added a new meal Dinner at commedia at commedia
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【commedia】
木場の住宅街に静かに佇むカウンターイタリアン『commedia』。2021年に開業。店を預かるのは、アロマフレスカ出身の山口大輔シェフ。全6席、厨房もワンオペ。コース一本のみで、仕込みは最小限、仕上げは基本目の前で完結。出来たてにしか出せない香りと温度、素材のタイミングに寄り添うための最小単位の設計。こだわりの生産者から届く確かな素材を、必要以上に触らず、必要な瞬間にだけ手をかける。その信頼と集中力が、皿にまっすぐ現れている。
その姿勢をさっそく示すのが「フォカッチャ」。オーブンから取り出される湯気と香ばしい香りが、コース開始の合図になる。表面はパリッと、中はもっちり。オリーブオイルと岩塩がしっかり効いていて、小麦の旨さをまっすぐに伝えてくる。焼き立てにしか出せない質感と温度。これだけで、この店が信じていることが伝わる。
「生ハムとサラミとブッラータ」は、八ヶ岳のクリスタルポークによる自家製生ハム、フランス産のコッパ、イタリア産のブッラータ。熟成の香り、塩気、脂の甘みのバランスが良い。
「ヤイトガツオのカルパッチョ」は、長野産の無農薬蕪、糸島レモン、赤ワインビネガー、十勝の山わさびを合わせたサラダ仕立て。厚めのカツオの赤身に、酸味と辛味のコントラストが加わり、しっかりした素材感がきちんと整理されて届く。
「ウニのジェノベーゼ」は、同店のコンセプトを象徴するような一皿。すり鉢で松の実、にんにく、バジルを丁寧にあたってソースを立ち上げる。その時点で、バジルの香りがカウンター中に立ち込めるほど強く、空間ごと持っていかれる。当然、口の中ではなおさら。粗めに刻まれたバジルが余計に香りを引き立て、そこにたっぷりのウニが重なる。磯の甘さ、青さ、オイルの艶やかさが一�... More
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【commedia】
木場の住宅街に静かに佇むカウンターイタリアン『commedia』。2021年に開業。店を預かるのは、アロマフレスカ出身の山口大輔シェフ。全6席、厨房もワンオペ。コース一本のみで、仕込みは最小限、仕上げは基本目の前で完結。出来たてにしか出せない香りと温度、素材のタイミングに寄り添うための最小単位の設計。こだわりの生産者から届く確かな素材を、必要以上に触らず、必要な瞬間にだけ手をかける。その信頼と集中力が、皿にまっすぐ現れている。
その姿勢をさっそく示すのが「フォカッチャ」。オーブンから取り出される湯気と香ばしい香りが、コース開始の合図になる。表面はパリッと、中はもっちり。オリーブオイルと岩塩がしっかり効いていて、小麦の旨さをまっすぐに伝えてくる。焼き立てにしか出せない質感と温度。これだけで、この店が信じていることが伝わる。
「生ハムとサラミとブッラータ」は、八ヶ岳のクリスタルポークによる自家製生ハム、フランス産のコッパ、イタリア産のブッラータ。熟成の香り、塩気、脂の甘みのバランスが良い。
「ヤイトガツオのカルパッチョ」は、長野産の無農薬蕪、糸島レモン、赤ワインビネガー、十勝の山わさびを合わせたサラダ仕立て。厚めのカツオの赤身に、酸味と辛味のコントラストが加わり、しっかりした素材感がきちんと整理されて届く。
「ウニのジェノベーゼ」は、同店のコンセプトを象徴するような一皿。すり鉢で松の実、にんにく、バジルを丁寧にあたってソースを立ち上げる。その時点で、バジルの香りがカウンター中に立ち込めるほど強く、空間ごと持っていかれる。当然、口の中ではなおさら。粗めに刻まれたバジルが余計に香りを引き立て、そこにたっぷりのウニが重なる。磯の甘さ、青さ、オイルの艶やかさが一� Less
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- ミトミ えもん added a new meal Dinner at 荒木町たつや at Arakicho Tatsuya
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【荒木町たつや】
花街の気配が今なお残る荒木町の路地裏に、2017年、その暖簾は静かに掲げられた。『荒木町たつや』。名店・神楽坂『石かわ』で腕を磨き、同グループの姉妹店『蓮』では料理長を任された石山竜也氏が、自らの名を冠して開いた一軒だ。出店にあたり長い時間をかけてこの街を選んだという話からも、料理のみならず空気や土地にまでこだわる姿勢が伺える。
この店を象徴する言葉を一つ挙げるとすれば、日本酒と歩幅を揃える料理たち。料理としての品格をしっかりと備えながら、同時に日本酒のアテとしても高い完成度を発揮する。そのどちらか一方に寄るのではなく、両立させていることにこの店の面白さがある。塩気の塩梅、出汁の温度、香りの立たせ方、そして余韻——そのすべてが酒を自然と呼び込みながら、一皿としての独立性も損なわない。
コースは、「白子」に菜の花やクロアワビタケを合わせた料理から幕を開ける。とろける白子の濃厚な旨味に、菜の花のほろ苦さ、クロアワビタケの深い出汁感が合わさり、静かな立ち上がりながら心を掴まれる。
続く「鯛とレンコンの春巻き... More
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【荒木町たつや】
花街の気配が今なお残る荒木町の路地裏に、2017年、その暖簾は静かに掲げられた。『荒木町たつや』。名店・神楽坂『石かわ』で腕を磨き、同グループの姉妹店『蓮』では料理長を任された石山竜也氏が、自らの名を冠して開いた一軒だ。出店にあたり長い時間をかけてこの街を選んだという話からも、料理のみならず空気や土地にまでこだわる姿勢が伺える。
この店を象徴する言葉を一つ挙げるとすれば、日本酒と歩幅を揃える料理たち。料理としての品格をしっかりと備えながら、同時に日本酒のアテとしても高い完成度を発揮する。そのどちらか一方に寄るのではなく、両立させていることにこの店の面白さがある。塩気の塩梅、出汁の温度、香りの立たせ方、そして余韻——そのすべてが酒を自然と呼び込みながら、一皿としての独立性も損なわない。
コースは、「白子」に菜の花やクロアワビタケを合わせた料理から幕を開ける。とろける白子の濃厚な旨味に、菜の花のほろ苦さ、クロアワビタケの深い出汁感が合わさり、静かな立ち上がりながら心を掴まれる。
続く「鯛とレンコンの春巻き 梅風味」は、香ばしい皮の中に鯛のふっくらとした身とレンコンの歯応えを包み込む。梅の酸味がアクセントに効き、素揚げにされたクワイが軽やかな苦味と心地よい食感を添える。
白味噌椀は、コクと香りの構成が光る一杯。まろやかな白味噌の甘みがクエの旨味をふわりと包み、ナメコのとろみが全体を優しくまとめ上げる。小さな蕪が控えめに添えられ、ほのかな甘みと食感が一瞬のアクセントとして響く。黒胡椒の香りがすっと立ち、穏やかな味わいに静かな輪郭を与えていた。
「お造り」はモンゴウイカ、シマアジ、ヒラメの三種盛り。イカは厚みのある滑らかな質感にスッと刃が入り、シマアジは脂と身質のバランスが抜群。ヒラメは清らかな旨味が広がり、引き算の美学が生む輪郭の美しさを感じさせる。
焼き物は「マナガツオと長芋の味噌焼き」 。しっとりと火入れされたマナガツオに香ばしい味噌が重なり、花椒の軽やかな痺れがふわりと鼻を抜ける。長芋のほくほくとした食感が絶妙な緩衝材となり、香りと旨味のバランスがとにかく心地よい。
「鴨と水菜の炊き合わせ キノコあんかけ」は、肉と青菜の力強さとやさしさが同居したような一皿。鴨のしっとりした火入れ、水菜のシャキ感、舞茸の香りと出汁のあん。構成はシンプルながら、味の層は深い。
「漬物盛り合わせ」は、茗荷の甘酢漬け、ちりめん、赤蕪などが皿の上に静かに並び、味の間合いを整える。どれも丁寧な手仕事を感じさせる控えめな美味しさで、次の一皿への橋渡しとしても機能する。
「メバチマグロとシシャモの南蛮漬け」は、なめろうのような濃密さのあるマグロに、そこへ味噌と薬味のコクが重なる。南蛮漬けのシシャモは酸味で切れをつくり、口内の温度をリセットしてくれるような存在。
終盤は、鴨出汁を使った二種類の雑炊。ひと椀目はキノコと香味野菜を合わせたもので、七味の香りが立ち上がり、キノコの旨味がじんわりと出汁に溶け込む。もう一椀は柚子風味の雑炊。同じ鴨出汁ながら、柚子皮の清々しさと三つ葉の青さが前に出て、印象をがらりと変えてみせる。薬味の使い分けでここまで輪郭が変わるかと驚かされる。
最後の一皿は、白ワインのジュレとマスカルポーネのクリームを主軸に据えたデザート。瑞々しくカットされた金柑が散らされ、その果皮の苦みと酸味が全体を引き締めている。
『荒木町たつや』の料理には、華やかさや意外性ではなく、積み重ねによって生まれる説得力がある。品格ある料理を貫きながら、それが同時に酒を引き立てる肴にもなっているという二面性。そのどちらにも偏らない、絶妙なバランス感覚がこの店の真骨頂だ。日本酒と一緒に味わうことで、さらに料理の奥行きが広がり、体に馴染むような余韻が残った。ご馳走様です。
#荒木町たつや #日本料理 Less
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- ミトミ えもん added a new meal Dinner at だしと麺 遊泳 at Dashi to Men Yuei (だしと麺 遊泳)
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【だしと麺 遊泳】
高円寺の住宅街に店を構える『だしと麺 遊泳』。2021年に早稲田で間借り営業としてスタートし、2023年7月に現店舗をオープン。店主・岸本健太郎氏は脱サラ組。ラーメン店、うどん店、製麺所を渡り歩き、麺と出汁という日本の食の核に正面から向き合ってきた経歴を持つ。「だし」と「麺」を冠した屋号は、その哲学を端的に表している。
主力となるのは「油そば」。だが、一般的な油そばとは一線を画す。麺は圧巻の存在感を放つ極太手もみ。見た目のインパクトだけでなく、口にした瞬間に感じるのは“もち”のような質感。歯を入れるたびに押し返してくる弾力と、そこから滲む小麦の香りと甘み。タレを絡めるというより、麺がタレを包み込む。そのまま噛みしめることで味が開き、食感と旨味が連動していく。咀嚼の動作そのものが快感に変わる。
タレは、出汁由来のうまみが軸。過剰な塩味や油の主張はなく、下支えとしての機能に徹している。麺とタレ、この二点だけで成立する構造に無駄はなく、逆に削ぎ落とすことで強度が増している。添えられるのは、淡く澄んだ「出汁スープ」。麺を浸してつけ麺風にすることも、スープに入れてラーメン風にすることも推奨されているが、実際のところそのまま食べ続けたくなる。完成された状態に加えるものが不要と感じるほど、一体感がある。生卵も味変の選択肢として提供されるが、味覚の重心は終始麺に置かれている。
『だしと麺... More
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【だしと麺 遊泳】
高円寺の住宅街に店を構える『だしと麺 遊泳』。2021年に早稲田で間借り営業としてスタートし、2023年7月に現店舗をオープン。店主・岸本健太郎氏は脱サラ組。ラーメン店、うどん店、製麺所を渡り歩き、麺と出汁という日本の食の核に正面から向き合ってきた経歴を持つ。「だし」と「麺」を冠した屋号は、その哲学を端的に表している。
主力となるのは「油そば」。だが、一般的な油そばとは一線を画す。麺は圧巻の存在感を放つ極太手もみ。見た目のインパクトだけでなく、口にした瞬間に感じるのは“もち”のような質感。歯を入れるたびに押し返してくる弾力と、そこから滲む小麦の香りと甘み。タレを絡めるというより、麺がタレを包み込む。そのまま噛みしめることで味が開き、食感と旨味が連動していく。咀嚼の動作そのものが快感に変わる。
タレは、出汁由来のうまみが軸。過剰な塩味や油の主張はなく、下支えとしての機能に徹している。麺とタレ、この二点だけで成立する構造に無駄はなく、逆に削ぎ落とすことで強度が増している。添えられるのは、淡く澄んだ「出汁スープ」。麺を浸してつけ麺風にすることも、スープに入れてラーメン風にすることも推奨されているが、実際のところそのまま食べ続けたくなる。完成された状態に加えるものが不要と感じるほど、一体感がある。生卵も味変の選択肢として提供されるが、味覚の重心は終始麺に置かれている。
『だしと麺 遊泳』は、もはやラーメンでもうどんでもない。出汁と製麺、それぞれの研鑽を積んだ者が到達した、ジャンルを超えた麺料理の提案だ。咀嚼のたびに引き出される旨味、食感そのものが味わいとなる一杯。そのままで完成された構造に、言葉は不要。食べることの根源に引き戻されるような体験がここにある。ご馳走様でした。 Less
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【酒とスパイス マツコ】
『酒とスパイス マツコ』は、日本橋の路地裏にひっそりと店を構えるスパイスカレーの店。昼の短い時間だけ営業されるこの場所で料理を手がけるのは、もちろん店名にもなっているマツコさんなのでしょう。2020年創業。福岡での間借り営業を経て東京に活動の場を移し、スパイスと出汁、香味野菜を軸にした一皿をつくりあげる。ジャンルに縛られない自由な発想と、それを料理としてきちんと成立させる構成力に、センスと経験の確かさが感じられる。
この日のあいがけは「ラムキーマ... More
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【酒とスパイス マツコ】
『酒とスパイス マツコ』は、日本橋の路地裏にひっそりと店を構えるスパイスカレーの店。昼の短い時間だけ営業されるこの場所で料理を手がけるのは、もちろん店名にもなっているマツコさんなのでしょう。2020年創業。福岡での間借り営業を経て東京に活動の場を移し、スパイスと出汁、香味野菜を軸にした一皿をつくりあげる。ジャンルに縛られない自由な発想と、それを料理としてきちんと成立させる構成力に、センスと経験の確かさが感じられる。
この日のあいがけは「ラムキーマ ニラミニトマト」と「海老出汁マサラレモンカレー」。
前者はラムの香りがしっかりと立ち上がるが、そこにニラの香味やパクチーの清涼感が加わることで、印象が重たくならず、最後まで食べ進めやすい。ラムの力強さをベースにしながら、香味野菜で引き締める設計がうまく機能している。
海老カレーは、出汁の力が前面に出た一皿。ルーの香りからして深く、口に運ぶと海老の旨味がしっかりと広がる。そこにレモンの酸味が加わることで、印象は重たくならず、むしろ後味はすっきりとしている。香りと旨味、酸のキレが心地よい。
トッピングのスパイスたまごと副菜が添えられた一皿は、混ぜていくことで印象が変化し、要素が自然と馴染んでいく。どこか一部分だけが強調されることはなく、全体に調和がある。
営業や予約の情報はインスタグラムで発信されており、予約はDMで受け付けるスタイル。日によって内容が変わることも多く、次はどんな組み合わせが出てくるのか、楽しみが尽きない。ご馳走様でした。
