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【鮨 さいとう 麻布台】
麻布台ヒルズマーケットの奥、つまりスーパーの中に暖簾を掲げる『鮨 さいとう 麻布台』。本店「鮨さいとう」は、齋藤孝司氏が2007年に「鮨かねさか 赤坂店」を引き継ぐ形で開業した名店。いまや香港やマレーシアにも展開し、国内の名店という枠を超えて、世界に向けた鮨ブランドとしてのポジションをより明確にしつつある。麻布台という東京の新しい象徴に店を構えたことも、その流れを強める一手に見える。さいとうは“店”でありながら、すでに“ブランド”なのだ。
そのブランドを支えるのは、やはり人である。カウンターの中に立つ多くの若い職人たちの姿を見ると、彼らがこれからの「さいとう」を担っていくのだろうと自然に想像する。本店ではなかなか握るチャンスが限られる中、ここでは握りのみで構成されるコースを通じて、実戦の経験を積むことができる。職人にとっては大きな成長の場であり、客にとっても価格は比較的抑えめ。つまり、作り手にも食べ手にもストレスが少ない。これはブランドとして、かなりポジティブなスパイラルに入っていると言っていい。
握りは、赤酢を効かせたシャリを軸に、ネタの甘味や脂を引き出していく、いわゆるさいとうの文法。構成は握りのみで、テンポよく鮨に集中できる流れ。いただいたのはこちら。
「甘鯛」
「伊佐木」
「小肌」
「赤身」
「中トロ」
「大トロ」
「アオリイカ」
「車海老」
「鯵」
「馬糞雲丹」
「煮蛤」
「トロたく」
「玉子」
総じて、素材も仕事も一定以上にあり、さいとうのブランドの力を感じる瞬間は確かにある。赤酢のシャリ、鮪の存在感、握りだけで組み立てる潔さ。香港、マレーシア、そして麻布台。世界へ広がる名の中で、人を育て、技術を循環させ、ブランドの厚みを増していく場所として、とても意義のある一軒だ。一方で、この日は煮切りがやや強く、全体の余韻に塩気が残る場面もあった。期待値が“さいとう”である以上、求める基準も自然と上がるが、それもまた名店の宿命。次回は、その期待値まで含めて満たしてくれる一貫に出会いたい。ご馳走様でした。
#鮨 #さいとう
