Foodle
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【とんかつ あづま】
日光の住宅地に店を構える『とんかつ あづま』。1978年創業、約半世紀にわたって暖簾を掲げ続けてきた一軒だ。使用する豚は和豚もちぶたに統一されており、素材の段階で方向性は明確。卓上にはウスターソース、中濃ソース、醤油、オリジナルソース、塩が並び、味付けの選択肢を複数用意しているのも特徴だ。
ロースカツ(特上)」
断面にしっかりと脂の層を確認でき、特上らしく厚みはかなりしっかりめ。加熱によって透明感を帯びた脂が全体に回る。衣は細かく、揚げ色はやや濃いめ。噛んだ瞬間に衣の軽い破裂音、その直後に脂の甘みが広がる。厚みがある分、中心までの火入れも安定していて、噛み進めるごとに脂の存在感が増していく。ソースを使えばコクが乗り、塩なら脂の甘みがより前に出る。
「ヒレカツ」
中心はしっとりと火が入り、噛み切る際の抵抗は少ない。ロースの後に食べると軽く感じられて、自然と箸が進む。肉の密度をシンプルに味わえる仕上がりだ。
ロースは厚みのあるカットで脂の存在感が強く、食べ応えの軸になる。一方でヒレは軽く食べられて、自然と箸が進む仕上がり。それぞれの特徴ははっきりしていて、調味料によって味の印象も変えられる。食べ終わる頃にはしっかり満足感が残る、そんな安定感のある一軒だ。ご馳走様です。
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【奈つやの中華そは】
東京・下丸子の住宅街に、ラーメン好きの巡礼地になりつつある一軒がある。間借り営業を経て、2024年に実店舗としてオープンした『奈つやの中華そば』。店名の「奈つや」は、奥様・奈津子さんの「奈つ」と、店主の修行先『びぎ屋』の「や」を組み合わせたもの。修行先への敬意と、家族の名前。その両方を大切にする姿勢が、この屋号に表れている。実際に店に立つ二人の接客もとても気持ちよく、人柄の良さがそのまま店の空気を作っているようだ。ちなみに、人気店ゆえ、現在は予約制を採用。朝7:28に予約サイトがオープンする仕組みだ。ちなみにこの時間は「なつや」に掛けたもの。そんな遊び心にも、この店の人柄が表れている。
いただいたのは「もちもち雲呑中華そば」。丼に顔を近づけると魚介の香りがふわりと立ち上がる。ファーストアタックで感じるのは煮干しの鮮烈な旨味。厳選された煮干しを贅沢に使いながら、エグみや苦味は見事に抑え込まれている。そこに鰹節や鯖節などの節系が重なり、香りに奥行きを生む構造だ。さらにその下から支えるのが鶏ガラと豚ガラの動物系出汁。魚介の輪郭を際立たせながら、味わいにはしっかりとしたコクが宿る。醤油ダレは芳醇でキレがありながら角が立たず、出汁の甘みをきれいに引き立てる。表面の香味油が熱を閉じ込め、最後まで煮干しの香りを鼻へと運んでくれる。
麺は菅野製麺所による全粒粉入りのストレート細麺。啜った瞬間に「パツン」と心地よく歯切れる食感で、スープの旨味をしっかりと持ち上げるど真ん中の設計。そしてこの店の代名詞ともいえるのが雲呑。岩手県産の希少なもち性小麦「もち姫」を100%使った皮は、一般的なつるりとした雲呑とは別物。まるで餅のような弾力を持つ“むっちり”とした食感が特徴だ。中には生姜の効いた肉餡。噛むたびに肉の旨味が広がり、生姜の清涼感がスープの旨味をきれいに引き締める。
気になった「茶碗カレー」も注文。ご実家の洋食店から受け継いだレシピで作る欧風カレーで、コクのある味わいが特徴。
鮮烈な魚介の香り、深いコク、そして餅のような雲呑。しっかりとしたインパクトがありながら、どこか優しさも感じさせる一杯だ。修行先で培った醤油ラーメンの技術を土台にしながら、「もち姫」の雲呑という個性を重ねた構成。その完成度は、わざわざ下丸子まで足を運ぶ理由として十分すぎる。少しハードルはあるが、それでも食べたいと思わせるラーメン。ご馳走様でした。
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【一鰻】
伊東の空気の中で、ピンと張り詰めるように佇む『一鰻』。黒を基調とした外観に、削ぎ落とされた意匠。店内に入れば、そこは無音に近いカウンターのみの世界で、耳に届くのは調理の音だけだ。一言で言えば“集中”。店主は寡黙で、視線と所作で語るタイプ。写真撮影の配慮、時間厳守、現金のみといったルールも、この緊張感ある空間を守るために機能を果たす。食べ手にも姿勢を求める店である。
この店の核は、執念のような下処理にある。小骨を一本一本抜き続けることで、口の中に一切のノイズを残さない。その上で、焼きと蒸しを組み合わせた火入れを施し、脂の旨味を最大限に引き出す。山椒を置かず、本山葵で食べさせるのも、鰻そのものの輪郭を際立たせるための選択だ。
まず「塩焼」。皿に並んだその姿はシンプルだが、一口で空気が変わる。雑味という概念が消え、白身魚のような透明感と、じんわりと広がる脂の甘みが共存する。噛むほどに旨味が染み出すが、重さは無い。ここで、この店の方向性がはっきりと提示される。
続いて主役の「うな丼」。蓋を開けた瞬間の艶やかな照り、香ばしい香りが一気に立ち上がる。箸を入れると、外側はザクッと軽やかな歯触り、内側はふわりと崩れて脂がとろける。皮目のバリッとした食感が全体を引き締め、単調さを感じさせない。タレは前に出過ぎず、あくまで脂の甘みを支える役割。気づけば無心でかき込んでいる。
脇を固める「肝吸い」は、透き通る出汁で口内をリセットし、「香の物」や「煮こごり」は食感と温度でリズムを作る。特に煮こごりは、鰻の旨味を別角度から提示する存在として面白い。
この徹底した骨抜きと引き算の味付け、そして寡黙な姿勢からは、鰻という食材に対する深い探究心が滲む。説明ではなく、体験で納得させるタイプの職人だ。ここは鰻を“食べる”場所ではなく、鰻と“向き合う”場所。ルールや空気感も含めて完成された体験であり、その一尾のために時間を使う価値がある。わざわざ行く理由が、しっかり存在する一軒。ご馳走様でした。
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【Bar Nea名駅店】
名駅に構える『Bar Neat 名駅店』。栄にある本格派バー『Bar Neat』の姉妹店であり、その重厚な世界観を継承しながらも、より間口を広げる役割を担った一軒だ。本店がウイスキーと静かに向き合う“深度”の店だとすれば、こちらはその入口として機能する存在。本格性はそのままに、距離だけを縮める設計がなされている。
その本店のエッセンスを最も色濃く感じるのがウイスキーのラインナップ。この日は「バランタイン17年」のオールドボトル、いわゆる“特級表記”の一本。1980年代以前の流通品で、現行とは設計の異なる時代のブレンドだ。ウイスキーの年数表記は最も若い原酒の熟成年数を指すが、この一杯は17年という下限を感じさせない一体感がある。蜂蜜のような甘やかさ、オークの包容力、そして角の取れた余韻。“時間を飲む”という感覚が自然と浮かぶ。そこに合わせるのが「3種のジャーキー」。ビーフ、ポーク、チキンと並ぶが、スモークのニュアンスがそれぞれに異なり、特にビーフの凝縮した旨味がウイスキーとしっかり噛み合う。酒と食が同じ方向を向いたときの説得力を、シンプルに体現する組み合わせだ。
一方でカクテルの完成度も高い。「モスコミュール」はジンジャーエールを使わず、発酵させた生姜で構成。炭酸の爽快感に頼らず、生姜そのものの辛味と酸、そして奥行きを引き出す設計で、口当たりはシャープながら後半にかけて丸みが広がる。クラシックに対する明確な解釈が見える一杯だ。さらに「キウイフルーツのフローズンダイキリ」。果実一個分を使ったフレッシュな仕上がりで、青さと甘さのバランスが絶妙。こうしたフルーツカクテルまできっちり仕上げてくるあたりに、この店の守備範囲の広さが表れている。
締めに選んだのは「トマトベーコンスパゲッティ」。濃厚なトマトの旨味にベーコンの脂が重なり、しっかりとした食べ応え。ここに「ブラッディーメアリー」を合わせることで、トマトの酸と旨味が共鳴し、食事とカクテルの境界が曖昧になる感覚が面白い。
本店と対になる存在として、この店はよく出来ている。ウイスキーで深さを担保しつつ、カクテルとフードで間口を広げる。その設計があるからこそ、バーへの一歩目としても、しっかり飲みたい夜にも成立する。入口でありながら、ちゃんと奥行きもある。実に使い勝手のいい一軒だ。ご馳走様でした。
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【創作麺 ひとすじ】
ラーメンという料理に、どれだけ真っ直ぐ向き合えるか。その覚悟をそのまま店名にしてしまった店がある。2025年2月に誕生した『創作麺 ひとすじ』。ラーメン一筋、その言葉通りの姿勢を掲げる一軒だ。店内はカウンター6席のみのコンパクトな空間。だがオープン直後から行列が生まれ、気づけば人気店の仲間入り。小さな店に集まる大きな期待。その理由は一杯の完成度にある。
「特上中華そば」
まず目に入るのは、その整ったシルエット。丼の表面に美しく並ぶチャーシューの淡いピンク、そして存在感のあるワンタン。中央にまとめられた青葱とメンマ。トッピングの配置が実に端正で、まるで一つの構図のように完成されている。ラーメンは豪快さが魅力になることも多いが、この一杯は、美しさが際立つ。
スープを一口。微乳化したスープは舌当たりがまろやか。動物系の旨味と脂が穏やかに溶け合い、醤油の輪郭を丸く包み込む。コクはしっかりとあるのに後味は軽い。レンゲを重ねるほどに旨味の層が見えてくる設計で、気がつけばもう一口、もう一口と手が伸びる。麺は細めのストレート。いわゆるパツン系の歯切れの良さ。噛んだ瞬間に小麦の香りが立ち、スープを軽やかに引き上げる。スープの丸みと麺のキレ。その対比が、この一杯のリズムを作っている。
そして印象に残るのは接客の良さ。行列店になればなるほど店の空気は慌ただしくなるものだが、この店にはそれがない。カウンター6席という距離感の中で、一杯一杯を丁寧に送り出している。『創作麺... More
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