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【リストランテ バル ポルテーニョ】
錦糸町の路地裏、雑居ビルの2階に潜む『リストランテ バル ポルテーニョ』。入り口には、スペインとアルゼンチンの国旗が仲良く並ぶ。今回いただいた料理は、基本的にスペイン料理の文脈に沿ったもの。ただし、この2つの旗は決して飾りではない。スペイン語圏として文化的なつながりを持ち、食卓にもどこか共通する陽気さと力強さがある。細かく分類するよりも、同じ言語と食文化の延長線上にある2つの国。入り口の景色だけで、この店が見ている世界が少し伝わってくる。
最初に登場した「エントラーダ」は、クロワッサン生地を使った小さなパンとオリーブのピンチョス。艶やかな焼き色の生地は軽く香ばしく、チーズの塩気も重なって食欲を刺激する。オリーブも素直に美味しい。こういう何気ない一口があると、ワインのスタートダッシュが決まる。
続く「イベリコ生ハムの切り落とし」は、白く透ける脂と赤身の濃淡が美しい。手でつまんで食べるのがスペイン流とのことで、そのまま口へ運べば、体温で脂がゆっくりほどけていく。塩気だけが前に出るのではなく、噛むほどに旨味が滲むタイプ。添えられたドライフルーツの甘味を挟むと、次の一枚へ自然と手が伸びる。体は正直なものだ。
「パン・コン・トマテ」は、目の前で仕上げるライブ感も楽しい。焼いたパンにニンニクを擦り付け、トマトを直接すり込み、エクストラバージンオリーブオイルと南スペインの塩を重ねていく。表面はカリッと香ばしく、中にはトマトの水分とオイルがじんわり浸透。ニンニクの刺激、トマトの酸味、塩の輪郭が順番に立ち上がる。作る工程まで含めて、スペインの食卓をそのまま切り取ったような一皿だ。
魚介の魅力を軽やかに見せるのが「セビーチェ」。帆立やタコなどの魚介に、紫玉ネギ、トマト、ライムを合わせ、ハーブの香りでまとめる。見た目は彩り豊かで、口にすると酸味が先行し、その後に魚介の甘味が追いかけてくる。厚みのある魚介とシャキシャキした野菜の食感の対比も心地よい。添えられたトウモロコシが、甘味と香ばしさを補うアクセントになっていた。
肉料理には「イベリコ豚ラックのアンダルシア風... More
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【リストランテ バル ポルテーニョ】
錦糸町の路地裏、雑居ビルの2階に潜む『リストランテ バル ポルテーニョ』。入り口には、スペインとアルゼンチンの国旗が仲良く並ぶ。今回いただいた料理は、基本的にスペイン料理の文脈に沿ったもの。ただし、この2つの旗は決して飾りではない。スペイン語圏として文化的なつながりを持ち、食卓にもどこか共通する陽気さと力強さがある。細かく分類するよりも、同じ言語と食文化の延長線上にある2つの国。入り口の景色だけで、この店が見ている世界が少し伝わってくる。
最初に登場した「エントラーダ」は、クロワッサン生地を使った小さなパンとオリーブのピンチョス。艶やかな焼き色の生地は軽く香ばしく、チーズの塩気も重なって食欲を刺激する。オリーブも素直に美味しい。こういう何気ない一口があると、ワインのスタートダッシュが決まる。
続く「イベリコ生ハムの切り落とし」は、白く透ける脂と赤身の濃淡が美しい。手でつまんで食べるのがスペイン流とのことで、そのまま口へ運べば、体温で脂がゆっくりほどけていく。塩気だけが前に出るのではなく、噛むほどに旨味が滲むタイプ。添えられたドライフルーツの甘味を挟むと、次の一枚へ自然と手が伸びる。体は正直なものだ。
「パン・コン・トマテ」は、目の前で仕上げるライブ感も楽しい。焼いたパンにニンニクを擦り付け、トマトを直接すり込み、エクストラバージンオリーブオイルと南スペインの塩を重ねていく。表面はカリッと香ばしく、中にはトマトの水分とオイルがじんわり浸透。ニンニクの刺激、トマトの酸味、塩の輪郭が順番に立ち上がる。作る工程まで含めて、スペインの食卓をそのまま切り取ったような一皿だ。
魚介の魅力を軽やかに見せるのが「セビーチェ」。帆立やタコなどの魚介に、紫玉ネギ、トマト、ライムを合わせ、ハーブの香りでまとめる。見た目は彩り豊かで、口にすると酸味が先行し、その後に魚介の甘味が追いかけてくる。厚みのある魚介とシャキシャキした野菜の食感の対比も心地よい。添えられたトウモロコシが、甘味と香ばしさを補うアクセントになっていた。
肉料理には「イベリコ豚ラックのアンダルシア風 チチャロン仕立て」。骨付きのラックを豪快に焼き上げ、スパイシーなハーブのパウダーをまとわせた一皿だ。表面には香ばしい焼き目が入り、内側には肉汁をしっかり残す。イベリコ豚らしい脂の甘味に、パウダーの刺激が重なり、単調にならない。付け合わせのズッキーニやニンジンのグリルも、肉の余韻を整える役割を果たしている。
そして、テーブルの主役は「チキンと魚介のパエージャ」。バルセロナスタイルとのことで、海老、ムール貝、アサリ、イカ、鶏肉、野菜が大きな鍋を彩る。見た目の華やかさに目を奪われるが、本質は米。魚介と鶏の旨味を吸い込んだ米は濃厚で、鍋肌に近づくほど香ばしさが増していく。魚介だけに寄せず、鶏肉を加えることで味に厚みを作る構成が良い。ここに「チミチュリソース」を添えれば、ハーブの青さと穏やかな酸味が入り、「アリオリソース」を合わせれば、ニンニクのコクが加わる。同じ鍋を食べ進めながら味の景色を変えられるのが楽しい。
最後は「自家製クレーマカタラーナ」。薄くキャラメリゼされた表面をスプーンで割ると、パリッとした音の後に滑らかなクリームが現れる。香ばしい苦味と優しい甘味の組み合わせには安心感があり、苺とクリームの添え方も王道。食後の着地としてきれいにまとまっている。
『リストランテ バル ポルテーニョ』の魅力は、スペイン料理の定番を丁寧に楽しませてくれること。目の前で完成する「パン・コン・トマテ」から、鍋ごと楽しむ「チキンと魚介のパエージャ」まで、食事の時間そのものを盛り上げる工夫がある。錦糸町の路地裏で、ワインを片手にスペイン語圏の食卓を旅する。肩肘を張らずに楽しめる、使い勝手の良い一軒。ご馳走様でした。
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