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【上諏訪 芦澤】
信州・諏訪の静かな街に、土地の空気をそのまま料理に映したような一軒、『上諏訪 芦澤』。2024年12月17日の開業、店主・芦澤修平氏は新宿御苑前「御苑前 せお」、修善寺「あさば」、銀座「井雪」の順に研鑽を積み、故郷である諏訪の地で独立した料理人だ。実家は、みそ天丼で知られる「徳八」という背景もあり、食の世界はきっと幼い頃から身近なものだったのだろう。カウンターのみの小さな空間に流れるのは、肩肘を張らせる緊張感ではなく、地元の恵みを丁寧にすくい上げる穏やかな空気。

料理の軸は、シンプルな作りと地場の魅力の切り抜き。魚は金沢、沼津、豊洲から届く。海なし県として魚に不利な見方もあるが、芦澤氏には「あさば」時代に関係を作った沼津があり、距離的には金沢や豊洲も、今の時代なら朝締めが届く範囲にある。考えてみれば、諏訪という中間地点はむしろ有利ですらあるのかもしれない。そこに信州の山菜や野菜を合わせていくことで、海の旨味と山の香りが自然に交差する。山菜の苦味、出汁の余韻、味噌の土地感が、料理全体に諏訪らしい輪郭を与えている。

始まりは「山菜と蛍烏賊の飯蒸し」。お凌ぎ的な一品だが、これがいい。もち米の柔らかな甘みに蛍烏賊の肝の旨味がじんわりと染み込み、山菜のほろ苦さが春の輪郭を描く。

続く「鴨、蕨、蕗」は、この日の印象に強く残る一皿。合鴨はしっとりと火が入り、噛むほどに肉の旨味が広がる。そこへ蕨のぬめり、蕗のお浸しの清涼感、そして出汁の穏やかな旨味。鴨の力強さを山菜が受け止め、出汁が全体を静かにつないでいく。普通にうまい。

「天ぷら」はすべて地物。たらの芽、こしあぶら、葉独活、モロッコインゲン、新生姜。衣は軽く、噛めばサクッと香りが弾ける。山菜の苦味や青い香... More