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【ふじさわ】
名古屋で寿司を食べる、その体験の解像度をぐっと引き上げてくる『ふじさわ』。カウンターに座った瞬間から、ただ美味しいで終わらない時間が流れ始める。高山の宮大工が手がけた設え、水を張った庭、研ぎ澄まされた静けさ。その中で供される一貫一貫が、気づけば“ここでしか成立しない寿司”だと感じさせる。
県内で腕を磨き続けた大ベテランが辿り着いたのは、技術をなぞるのではなく、自身の美意識で再構築するという境地。醤油や味噌まで自ら仕込み、味の設計を外に委ねない。さらに炭火を使った火入れで香りを重ね、素材・調味料・技法のすべてを自分の文脈で統一している。その積み重ねが、自然とオリジナリティとして立ち上がる。そして気づけば、その仕事は名古屋の職人たちに影響を与える存在になっていた。
つまみの流れも、この店の世界観をよく物語る。「春の貝類と山菜の酢味噌和え」は苦味と酸味で季節を描き、「鯖寿司」は目の前で炭火にかけることで脂の甘みと香ばしさが一気に立ち上がる。このライブ感ある演出は、多くの職人たちにも広く影響を与えた一手だ。「浅利」は小鍋で供され、ふっくらとした身に対して出汁の旨味がじわりと染み込み、温度とともに味の輪郭がほどけていく。
「筍と空豆」は食感と香りのコントラストが鮮やかで、「蛍烏賊と菜の花の湯葉巻き」は焼いた湯葉のパリッとした食感が秀逸、内側の濃厚さを見事に引き締める。「稚鮎」のほろ苦さで季節の輪郭をなぞる。「毛蟹の蒸し寿司」は、ふくよかな甘みと米の一体感が際立ち、コースに柔らかな山を作る。「蓮根饅頭」は出汁の旨味がじんわりと広がり、「フルティカトマト」の瑞々しい甘みで余韻を整える。それぞれがすでに小さな完成形だ。
握りに入れば、その再構築�... More
