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【荒木町たつや】

花街の気配が今なお残る荒木町の路地裏に、2017年、その暖簾は静かに掲げられた。『荒木町たつや』。名店・神楽坂『石かわ』で腕を磨き、同グループの姉妹店『蓮』では料理長を任された石山竜也氏が、自らの名を冠して開いた一軒だ。出店にあたり長い時間をかけてこの街を選んだという話からも、料理のみならず空気や土地にまでこだわる姿勢が伺える。

この店を象徴する言葉を一つ挙げるとすれば、日本酒と歩幅を揃える料理たち。料理としての品格をしっかりと備えながら、同時に日本酒のアテとしても高い完成度を発揮する。そのどちらか一方に寄るのではなく、両立させていることにこの店の面白さがある。塩気の塩梅、出汁の温度、香りの立たせ方、そして余韻——そのすべてが酒を自然と呼び込みながら、一皿としての独立性も損なわない。

コースは、「白子」に菜の花やクロアワビタケを合わせた料理から幕を開ける。とろける白子の濃厚な旨味に、菜の花のほろ苦さ、クロアワビタケの深い出汁感が合わさり、静かな立ち上がりながら心を掴まれる。

続く「鯛とレンコンの春巻き... More