駿河湾の春は
気温より先に
桜海老が連れてくる
小さな体
透きとおっていて
触れたら消えてしまいそう
籠に入れられて
下は少しつぶれるから
上だけをすくう
そのやさしさが
味になる
油に落ちると
ジュッと鳴って
志村さんの手がひと回り
油がゆるく動いて
海みたいになる
桜海老が
その中で泳ぐ
ほんの一瞬
火は長くいらない
上げて
塩をひとつ
口に入れると
サクッときて
すぐに香りがひらく
あとから
やわらかい甘みが
静かにのぼってくる
朝のレタスで
包んで食べる
シャキッ
サクッ
水と油と
青さと香ばしさが
いっしょになる
気持ちいいなと思う
ほんの少しのあいだしか
食べられない味
だから
ちゃんと覚えている
これが
成生の春だと思う🌸
