金沢「天ぷら的場」で、銀宝がまな板に上がると、場の空気がすっと引き締まる。
細長い体に海のぬめりをまとい、背びれは鋭い。初めて見る客は、この魚が天ぷらの白眉だとは思わないだろう。だが職人は知っている。天ぷらは素材の派手さではなく、油と火が本質を引き出せるかで決まる料理だ。
銀宝は冬の終わりから春先にかけてだけ現れる。生きたまま油に入れれば衣が弾け、魚体がすっと立つ。噛めば、まず上品な甘み、続いて皮下の膠質がもたらす奥行きのある旨みが広がる。その一切れで、天ぷらとは何か、江戸前とは何かが腑に落ちる。銀宝を知らずして、天ぷらは語れない。
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